僕が化粧品開発に込めた思い

世界基準のキレイの秘密、教えます

このコラムでは、どうしたら綺麗きれいでいられるか、僕なりの考えを皆さんに伝えてきました。今回は少し横道にそれるかもしれないけれど、僕の化粧品開発のストーリーを書きますね。

美容界になかった美意識を吹きこみ続けたい

僕の化粧品作りのこだわりは、使いやすくて女性が綺麗に見えること。当たり前で、面白みのない言葉ですが、僕にとってそういう化粧品は世の中にないものだったのです。

例えば日常のメイクで、ファンデの化粧の質感が美しいことにこだわった今までのベースメイクは、僕にとって綺麗ではありません。それよりも、人肌そっくりで美しい素肌のように見えるベースメイクをずっとし続けたら、世界中のファッション業界のビジュアルがいつの間にかそうなってしまいました。

素肌のように見えるメイクを追求

10年前、化粧品ブランドを始めた時に、僕にとっては当たり前の「素肌のような美しさ」と「ツヤ肌」という考えをメイクで伝え始めました。当時は誰にもない発想だったかもしれないけれど、今では多くのメジャーブランドがファンデーション訴求のために使う、当たり前な言葉になっています。実際にメイクしてみると、僕にとってはいまだに化粧感があって素肌のようではありませんが。

素肌そっくりのファンデ

世の中にないものは、みんなを驚かせて、時に戸惑わせちゃいます。僕の素肌そっくりのファンデは、つけると肌に馴染なじんで見えなくなるので、初めて使うとみんな「ついてない」って思ったり、でもまじまじと見ると隠したいものが補正できていて素肌のようになっているので「信じられない」という顔をしたり。

今までもこれからも、お化粧というものは「ずっと綺麗になりたい、何かを隠したい、変身したい」というものだと思いますが、世の中の多くの化粧品は塗ると顔料が見えるから、綺麗になりたいほど、隠したいほど、ペンキを塗ったような厚化粧に見えてしまうのです。

メイクで女性が綺麗になるためには、元々人が持っている肌の美しさを見直して、色を塗る時もペンキのようじゃなく、頬やまぶたがほんのり染まったような自然さを追求しなくてはと思っています。

ローズコレクション・メイキングストーリー

僕のもの作りはいつも、「なんでこうなんだろう?」っていう不満から始まります。2017年の春、僕は自分が作ったマスカラに対する不満を並べ立てて、新マスカラの開発を始めました。

「もっと黒くつややかに、もっと美しくて自然なボリュームを!」

乾く前はどんなマスカラも濡れてツヤツヤなのに、乾くとどうしてツヤが消えるのか? ボリュームと長さは繊維で作るのが当たり前だけど、表面がざらついて僕には綺麗に見えないから、それなしで同じ効果を出すには? その解決方法を自分なりに考えて研究者に投げかける。

そんなコミュニケーションを続け、ちょっといい感じになった頃、2019年秋のコレクション製作が始まりました。いつものようにトレンド資料を見ながらコレクションのムードを考えます。僕にはローズが香りました。それは、女性らしさが香りたつインスピレーションです。

<柔らかな肌のぬくもりから感じるローズピンクが、ほんのりと暖かなパールホワイトの光の中で輝く。肌色のカーブに添えられるグリーンやブルーの淡い影にもローズが香って、濡れたように艶めくピュアーブラックのまつ毛とコントラストを作りだす>

思い立って書きつづったこんなイメージを目指して、印象が薄れないうちにあたふたと「香るようなコレクションの色と質感」を考え始めます。僕にとってバラは女性らしさの象徴なのですが、それはか弱いというのではなく、デリケートな美しさと強さを併せ持った存在です。目元は強さを感じさせるので、艶やかに濡れた黒髪のようなまつ毛をこのコレクションのキーポイントにしました。

印象的な視線をデリケートな雰囲気にするのが、今回僕が作り出したローズカラーの役割です。

限りなく黒に近い深い色から、軽やかに光の中で溶けてなくなるようなデリケートな色まで、リップカラーもアイカラーも全てにバラを感じるくすみを入れて僕が思うローズカラーを作り出していくのですが、多くの女性が美しく見えるように、色に透明感も出していきます。程よい透明加減を見つけ出すための試行錯誤で出来上がる試作品の山はご覧の通り。

2019秋コレクションの試作品の一部

このクリエイティブなプロセスは地道に突き詰めていく作業ですから、関わるスタッフにとっては、楽しめなければ拷問のようにつらい忍耐の連続ですよね。

こうして出来上がった、キッカで僕が手がけた最後のプロダクト。全ての世代の女性が使いこなせて自分の「綺麗」を楽しめる、ウキウキするような楽しさを込めた僕のローズカラーをつけてみてください。そして、香り立つ色を感じてテンションを上げてもらえたら……。

いろいろ大変だけど、発信者も受け手も両方が楽しい、こんな仕事は辞められないですね!

 

吉川康雄さんの連載「世界基準のキレイの秘密、教えます」は、こちら。