アラサーからの「あつらえ浴衣」 サイズも色柄も自分仕様で街へ

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(キモノバイナデシコ提供)

 デパートや専門店の売り場に、浴衣が並び始めました。最近人気が高まっているのは、反物を選んで、体がすっきり見えるよう自分サイズに作ってもらう「あつらえ浴衣」です。昼間でも粋な街着として使える、通好みの色柄もそろっています。30歳代を中心に、あつらえデビューする人が増えているそうです。

意外に手頃

 あつらえは着物に慣れたベテラン世代向けというイメージもありますが、「最近はあつらえデビューの年齢が下がってきています」と、「キモノバイナデシコ」の延山直子さんは話します。キモノバイナデシコは、大手着物専門店「やまと」(東京都渋谷区)が20~30歳代向けに、主要都市のファッションビルなどに展開している専門店です。

 浴衣は「インスタ映え」するアイテムで、「浴衣割引」のようなイベントなど、着ていく機会も増えています。「1回作ってみると、シルエットがきれいに出るし、着付けが楽だとわかります」と延山さん。

 キモノバイナデシコでは入門用として、今年から仕立て代込みで1万9900円(税別)の「BASICゆかた」を始めました。注文から完成まで約25日です。

(写真=キモノバイナデシコ提供)

 柄は古典的なツバキやアジサイ、カジュアルな鳥の模様の3種類。それぞれの柄ごとに3色ずつあります。カーキやベージュなら、街歩きや買い物にも気軽に着ていけそうです。BASICゆかた以外にもたくさんの反物を用意しており、仕立て代込みで2万~5万円台のものが人気です。

着付けが楽で、すっきり見える

 着物は洋服ほど厳密にサイズを合わせる必要はありませんが、やはり限度はあります。 既製品は身長1メートル55~65センチぐらいの人をイメージしているので、小柄な人だと布地が余り、大柄な人だと足りなくなる場合もあります。実際に同店スタッフの横尾汐理さんに自分サイズのBASICゆかたと、同柄の既製品を着くらべてもらいました。

 身長1メートル52センチの横尾さん。既製品だと袖が手にかぶってしまい、おはしょりも長く、姉のお下がりを着ているような印象で、子供っぽく見えます。

左はサイズがあっていないので、もたついた印象。右はサイズが合っていてすっきりとしいてる

 おはしょりの長さは、上に折りあげて短く調整することもできますが、「体をよじって、だぶついた布地をぎゅっと横に巻き込む。下に長くのびた生地をぐっと持ち上げて、おはしょりを作る。一人で既製品を着るのは面倒です」と、横尾さん。しかも、「横にふくれて見える上、ウエスト回りが厚くなって夏はつらい。そもそも着付け初心者には難しいテクニックです」。こうしたことから、あつらえ浴衣の方がむしろ、着付け初心者に向いているのだそうです。

 大人の女性であれば、すっきり上品に着こなしたいと思うもの。あつらえであれば、袖もおはしょりもちょうどよい長さに作れます。脇に巻き込む布地の量も最小限なので、胸元もすっきり見えます。後ろ姿も、帯から下の縫い目が中心に来るようになっています。

 横尾さんが着付けにかかった時間も、おはしょりの調節などに手間取らなかったぶん、あつらえのほうが短時間ですみました。

職人ものの反物で、粋に

 松屋銀座(東京都中央区)が同店の公式メルマガ会員の女性1134人から回答を得たインターネット調査によると、86%がゆかたを持っていて、37.6%にあつらえの経験がありました。体形が変化し始め、その一方で経済力に余裕も出てきた30歳から40歳にかけて、あつらえデビューする人が増えていくそうです。

 仕立て代込みで5万円台後半からが、同店の売れ筋価格帯です。注文から完成まで約3週間。職人が染めた繊細な色遣いのものや、渋い通好みの反物を選ぶこともできます。大人の女性にぴったりです。  

 特に背が高く、女性用の反物ではサイズが合わせられない人でも、男性用の反物を使って、ぴったりサイズに仕立てることができます。大人向きの渋く粋な色柄なら、むしろ男性用の方が充実しているそうです。

 既製品は若者向けのカラフルなプリント生地が中心で、生地の種類も限られていますが、職人ものなら「他人とかぶることは、まずありません。むしろ自分と反物の、一期一会の出会いが楽しめます」と、同店バイヤーの菱沼麻紀さんは話します。

柄の配置も自分好みに

 あつらえなら、柄の配置を計算して仕立てることもできます。襟元は白地を多めにして顔をすっきり見せ、胸元に目立つ模様を集めて、華やかに。縦じまを体の中心線にもってきて体をスマートに見せたり、逆にボリュームを感じさせる配置にしたり。自分の体形と好みに合わせることができます。

 着物離れと言われていても、根強い人気の夏の浴衣。最近では、洋服のカジュアルブランドでも8000円台など低価格の既製品が登場し、浴衣が身近になっています。そこからのステップアップをねらった、あつらえ浴衣。2020年の東京五輪に向けた「和ファッション」や「自撮り」の需要も追い風になると、専門店やデパートの期待も大きいそうです。

(読売新聞経済部 庄野和道)