家庭用の編み機を知っていますか? 昭和時代には普及していましたが、すっかり見かけなくなりました。ところが最近、その編み機を使ったワークショップが人気を集めています。ニットデザイナーの村松啓市さんが、「ニット製品のものづくりの過程を知ってもらい」と、2年ほど前に始めたものです。初めての人でも、あっという間に大判のストールが編めるので、挑戦してみてはいかがでしょうか。
家庭用編み機で、ものづくりを体感
村松さんは、静岡県島田市に店舗兼アトリエを構えています。ブランドの名前は「AND WOOL」。糸や素材、編み方などの提案、ニット製品のデザインや製造をしています。また一般向けに、毛糸や編み機の販売もしています。

この店舗に加え、東京や大阪、福岡など各地でワークショップを行い、参加者は延べ500人を超えたそうです。ギャラリーや衣料品のショップなどで、1回に2~4台の編み機を用意しています。「棒針やかぎ針を使う手編みと違い、すぐに編み物が完成するところが満足感につながっているようです」と、村松さんは言います。
不器用でも大丈夫
ワークショップでは、カシミヤの大判ストール(幅60センチ、長さ220センチ)を1万7000円(税抜き)で作ることができます。幅35センチ、長さ220センチだと1万1000円(同)です。また、春夏向けにはベルギーリネンのストールが、6000円(同)で作れます。

都内で開かれたワークショップを取材すると、参加者が黙々と編み機のハンドルを右に左に動かしていました。針に糸をかける作業や、糸が切れてしまったときの手直しなどはスタッフが手伝ってくれます。「汗がにじんできた」「二の腕が痛い」と言う人もいましたが、だいたい30~40分で完成していました。編み上がったら、同社で仕上げの縮絨加工をしてから手元に届けられます。参加者からは、「店で買うよりも安くてうれしい」「不器用でもできて楽しい」という声が聞かれました。リピーターも多いそうです。
ニットの奥深さ伝えたい

「日本では、ニットについて学べる場所が限られています。技術や知識を継承していくためにも、ニットのおもしろさや奥深さを多くの人に伝えていきたい」と村松さん。一般向けのワークショップのほかにも、指導者や編み手の育成、障害者の就労支援、在宅ワークをしたい人への編み方の指導なども行っています。

茶畑に囲まれたアトリエには、観光をかねて県外からも多くの人が訪れるそうです。「作る人も、お客さまも育てられたら」。村松さんはそんな夢を抱いて、地道な活動を続けています。ワークショップの情報は、AND WOOLのホームページで、確認してください。
(取材・文 メディア局編集部 小坂佳子)