時を超えて走る「オリエント急行」に乗って

マリ・クレール スタイル

(c)Pauline Darley

 「オリエント急行」。体制より象徴に重きが置かれた時代に、燦然さんぜんとラグジュアリーを体現していた数少ない名前です。1920~30年代のカフェ・ソサエティのような、コスモポリタンな貴族やアーティストの集まりも思い出させますね。

 アガサ・クリスティの『オリエント急行殺人事件』は不朽の名作となり、何度も映画化されていて、最新のものは2017年に公開されました。かつてはヨーロッパを横断していたオリエント急行ですが、現在でも当時の美しい車両が実際の線路を走っています。芸術作品のような列車が今の時代に本当に運行されてるなんて、素晴らしいとしか言いようがありません!

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 しかし、パリ~ベニス間やパリ~イスタンブール間などを走行している今日の列車は、かつてのように「オリエント急行」という名前ではないのです。

 元々ベルギーの鉄道会社が運営していたものは廃止されており、現在のオリエント急行は82年にオリエント・エクスプレス・ホテルズ社(現・ベルモンド社)が開始したもので、「ベニス・シンプロン・オリエント・エクスプレス」と名付けられています。それでもリュクスでオーセンティックなところは昔と変わりありません。20年代に生産された寝台車などで構成されていて、ほとんど当時のままの素材が用いられているのです。本当に素晴らしいオブジェだと言えるでしょう。

(c)Pauline Darley

 この「ベニス・シンプロン・オリエント・エクスプレス」に乗ってヨーロッパを旅するというのは、時を超えた唯一無二の体験です。もちろんそれなりの対価が必要ですけどね!  すべて込みのリゾートが割引価格で手に入る時代に、たった24時間の旅に2週間分のバカンスに相当する料金を払う人たちがいるというのは、とても興味深い事実です。

 しかし、何も顧客は大金持ちの特権階級ばかりではありません。趣味人や鉄道ファンの他に、新婚旅行や結婚記念に訪れるカップルも利用しています。夢のようなひと時を過ごせるのですから、乗客は皆幸せそうで、車内の雰囲気も明るいものです。ただ一つ難点をあげるとするならば、いつかは列車を降りて、現実の世界に帰らなくてはいけないということくらいですね!

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ルイーズ・エベル
ルイーズ・エベル(Louise Ebel)
ファッションブロガー

 ファッションブログ「PANDORA」を主宰。フランス、パリ在住。子どもの頃から美術史と19世紀の世界に夢中となり、ファッションやアートへの関心も高く、大学で美術史を専攻。マリー・アントワネットやマルチェサ・カサティの世界が好き。ビンテージファッションやアンティークの小物の収集家としても知られる。

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