写真と春画が出会ったら……。時代も国も超えた「生と性」の対話

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Yumiko & Ana, 2017(c)SP2X

 「シャネル・ネクサス・ホール」で、ユニークな企画展が始まります。

 北斎漫画の世界一のコレクターとして知られる浦上満さんの珠玉の春画コレクションと、パフォーマンスアーティストであり写真家としても活躍中のピエール セルネの作品とが、一堂に会するのです。

普遍的な「生」を描いた春画

 春画は江戸時代に浮世絵の一つのジャンルとして人気を博し、多くの絵師によって数千点を超える作品が制作されました。男女の区別なく愛されたのは、そこに描かれていたのが人間の普遍的な「生」だからだと言われます。

人間の性愛がユーモアたっぷりに描かれた春画は「笑い絵」とも呼ばれた。喜多川歌麿「歌まくら」天明8年(1788)浦上満氏蔵

 春画の大胆な構図や色彩は、海を渡り、パブロ・ピカソや印象派画家にも影響を与えました。昨今では大英博物館で春画展が開かれるなど、世界的に注目を浴びているジャンル。本展では葛飾北斎のほか、鈴木春信、鳥居清長、喜多川歌麿らの作品が展示されるのだとか。

抽象表現から垣間見える普遍的な「性」

 一方、ピエール セルネ作品からは、写真作「Synonyms(同義語)」シリーズが並びます。「世界の人びとの間に存在する類似点の探求」を制作主題に掲げるセルネが本シリーズにおいて被写体としているのは、文化的・民族的に異なる背景を持つ、個人やカップルのヌード。といっても、生々しい肉体ではなく、モノクロのシルエットによる抽象形態によって表現されています。

ピエール セルネ「Synonyms(同義語)」シリーズから何を認識するかは、鑑賞者に委ねられている。Kaitlin & John, 2016 (c)SP2X

 各作品タイトルが被写体の名前となっているため、被写体である彼や彼女の背景を推測することが可能。それぞれ性別も国籍も文化的背景も異なる人物たちのはずなのに、写真に切り取られているのは、性あるいは性行為という人類に共通するテーマ。なんとも不思議な作品です。

 「わたしたちは、それぞれ他人とは異なる唯一無二な存在である一方で、普遍的な共通点を持っています。だからこそ、違う文化やライフスタイル、さまざまな人びとをもっと受け入れるべき」(ピエール セルネ)

 生を描いた春画と、性を写し出したセルネ。時代も国も超えた作品ですが、両者の対話によって、「人間が生きることとは?」を考えるきっかけとなるはずです。

 文・多田亜矢子

シャネル・ネクサス・ホール

ピエール セルネ&春画

会期*前期2019年3月13日(水)~27日(水)
後期2019年3月29日(金)~4月7日(日)
会場*シャネル・ネクサス・ホール
(東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F)
時間*12:00~19:30 ※3月28日
(木)は展示替えのため休館/入場無料