ピンクは女性 そのもの
柔らかい 色というよりは存在
だから全ての“女性を美しく見せる色”は、
ピンクから生まれ、女性に美しくフィットする“
これは、僕の中にずっとあった考えなのですが、それがはっきりと起こってしまった撮影があったのです。
その日、メイクは難航していました。
「いたたたたた〜!」。なんて、モデルが叫びそうなので、苦肉の策で、僕が代わりに叫び、気を散らしつつアイメイクをゴシゴシと落としている。
まだ創刊して間もないヴォーグジャパンのビューティーの撮影。ニューヨークのスタジオで、トップモデルのカロリナ・クルコヴァさんの写真を2枚撮る予定でした。最初のショットはバッチリ決まり、すべては“お茶の子さいさい”に見えたのに……。
2ショットめ。
僕はアイメイクに、強烈なピンクとブルーを発色する“あのアイシャドー”が作り出すパープルが、どうしても欲しかった。

だけど、そのシャドーの赤ピンクと青の色素は、まぶたに染まりやすく、一度つけたら数日は色がとれなくなるので、そのあと絶対にメイクを変えない時にしか使わない、ある意味、禁断の色。
その日最後のショットということもあり、誘惑に勝てるはずもなく、カロリナに、軽くそのことを説明して使わせてもらい、結果、めちゃクールなメイクができて、みんな大満足!

と、そこまでは良かったのだけれど、急遽、ナチュラルメイクの写真も欲しいと、エクストラショットのリクエスト。それでメイクをオフし始めたのです。
予想通り、というか予想以上にまぶたは真っピンクに染まり、落としても全然とれない。その染まり方は、“ヤバい、訴えられたらどうしよう?”って、頭をよぎるくらい。思わず「Are you OK?」って声をかけました。
そしたらカロリナは……、「It’s so beautiful!!!」って。正直、素肌で、あんなに鮮やかなピンクの“素まぶた”をもった女性、僕は後にも先にも見たことがありません。
火照りを超えて熱を持ったようにも見える、シュールで鮮やかな青みがかったピンクに染まった目元。冷静になってみると、素のまぶたの肌感なので、本物の透明感を作り出し、アンリアルな自然の美しさになっていたのです。それは“真っ青でも本物の瞳”と同じようにね。焦ってファンデーションでその赤みを消しかねなかった僕に、そのキレイさを伝えてくれた彼女の一流のモデルとしてのアドバイスが、この仕上がりに導いてくれました。

ピンクは肌の赤みを連想させる。それは女性の温かさと熱を表現して、すべてのエモーションを想像させる色。だから、ほどよくピンクを差すと、香水のようにいろんな魅力を漂わせてくれる。女性にとっては色を超えたマジカルな存在だと思うのです。
だけど、残念なことに日本では、ピンク=カワイイとか、若い女性に似合う色などと思われ、かなり偏った狭い見方をされているので、それ以外の女性の魅力とピンクが合いにくくなっている。
僕がCHICCA(キッカ)というコスメブランドを始めた時も、“昔似合ったピンクが似合わなくなった”とか、“ピンクはもう使えないから卒業したい”という声を聞き、まずは全ての世代の女性が使いこなせるピンクのリップスティックを作ろうって思ったほど。
ピンクは、ただカワイイだけの色じゃなく、シック、クール、セクシー、モード、と、いろんな魅力が詰まっています。そのピンクを楽しむのに大切なのは、自分にフィットさせるテクニック。僕がこの撮影で学んだように、自分の肌を透けさせ、ずっとピンクを使いこなしてほしいですね!
ただ、色が染まるのはいけません。僕は彼女と次の撮影で会った時、思わず「あのピンク、すぐに取れた?」って聞いたぐらい心配しちゃいました。
今度12月に東京・銀座で、“PINK !”をテーマにしたパーティーに参加します。パーティーについてはこちら。みなさんと一緒にいろんなピンクを楽しみたいと思います!
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