美人になるには、どこから始めればいいか

世界基準のキレイの秘密、教えます

化粧品がずらりと並ぶ、吉川さんのニューヨークの仕事場

 「ビョークさん!Do you like it ?」と言って、彼女にこの写真を差しだしました。

  

  はじめて歌手のビョークさんと仕事した時、会ってすぐなのに、こんな唐突な会話を始めてしまったのです。

ニューヨークで気づいたこと

 当時、僕はニューヨークに来てまだ数年の、あまり顔も知られていないニューフェイスでした。素性もわからないような初対面のアジア人に、いきなり風変わりな写真を見せられて始まった撮影日の朝の打ち合わせ。

 「ワー可愛かわいい!大好きよ!」

 なんていう彼女のレスポンスとともに雰囲気は盛り上がり、僕が英語がヘタなことなんて全然気にする様子もなく、どんどん話しかけてきます。たどたどしい英語で「I want to do this make-up for you. OK?」 なんて伝え、僕は仕事を始める。それがどう仕上がるか、想像もつかないはずなのに、彼女は不安そうでもなく、むしろ楽しそうな感じ。

 そしてその日、バンビのまつげにインスパイヤーされたピュアーでイノセント風なルックのビョークさんが仕上がりました。

make up by Yasuo Yoshikawa 吉川さんの作品ポートフォリオより

 僕は、いつもマックスに斬新な彼女に、誰もやったことのないようなミニマルでユニークなデザインのアイデアを勇気を出してぶつけてみたのです。それは彼女にとって印象的だったようで、その日を境に、僕たちはよく一緒に仕事をするようになりました。

 ニューヨークで仕事をする人は、かなりオープンマインド。言葉なんて通じなくても、伝えたいことがあれば心を通じあって仕事をすることができます。だからこそ僕は受け入れられたし、多くの人に出会い、刺激を受けることができました。そして、そこで見てきた“世界基準のキレイ”は、僕にいろんなことをつきつけ、考えさせてくれました。今回は、そのお話を。

美しさをクリエイトする楽しさ

 はじめまして。メイクアップアーティストの吉川康雄です。

 ニューヨークに移り住んで、あっという間に25年近くもたってしまい、僕は人生の進みの速さに唖然としています。むかし出会ったあの10代のトップモデルたちは、もう40歳を過ぎ、いま出会って一緒に仕事をしているモデルたちは、僕がニューヨークに来た後に生まれたニューエイジたち。

 魔法にかかったような不思議な気持ちになりますが、その全てを総じ、確信したことがあります。それは、「女性は生涯、美しくなることを堂々と楽しめる性に生まれついている」ということ。その美しさをクリエイトするのは、あまりに楽しく刺激的。それは僕の人生の時間のほとんどを費やしてしまうほどです。

make up by Yasuo Yoshikawa 吉川さんの作品ポートフォリオより

 だけどそうやって多くの女性たちと出会って、「“美しくなる”という喜びには、同時に苦しさや悲しさも伴い、人生のハードルの高さも突きつけられている」ということにも気づかされました。特別な女性だけのお話ではありません。

自分を否定する女性たち

 もう少し具体的に、お話ししますね。

 お母さんは、娘が赤ちゃんの頃から、可愛くなってほしいと願って、何を着せる?どんな表情が可愛い?などと一生懸命考えています。女性は、代々そんなふうに育てられることで、ほとんどDNAレベルに近い本能的なところで綺麗きれいになりたいっていう意識を持つのではないでしょうか。

 だから自然に、美人といわれる人にあこがれたり、そんな顔になりたい、なんて思ってしまう。けれど、それが難しいとわかった時、他人をうらやんだり、自分のここもあそこも嫌い、などと考えてしまいます。

 そんなあこがれと自己否定のダブルパンチで自分が嫌になっていく女性は山ほどいます。それをあおるように、美人のかたちの定義を声高に語る化粧品や雑誌の情報。いろんな肌の生理や、生まれ持った要素を勝手に○と×で色分けして、オール○の美人を目指させる。そんな非現実的な美を語る世の中で生きていると、それに当てはまらない女性たち(=世の中の全ての女性)の自己否定感は、どんどん強まるばかりなのです。

輝くためのスターティングポイント

 まさしくこんな僕の感じているようなことをストーリーにしている「I Feel  PRETTY」(日本では12月公開)という映画を最近発見してしまいました。

 自分のルックスにコンプレックスを持った主人公の女性はある日、頭を打って自分が美しいと思い込んでしまうところから始まります。僕は長い間多くの女性と仕事をして、全ての女性はそれぞれ違った魅力を持っている、ということを知ってしまったのですが、この映画は、その“自分の価値を信じることが魅力につながる”ということを伝えています。

 あなたがこの映画の女性より綺麗か綺麗じゃないかということではなく、すべての女性にとって綺麗なひとになるためのスターティングポイントはそこにあるということなのです。

 ビョークさんに会った印象は、僕の思った通り、“輝く魅力を持ったひと”でした。けれど彼女も、そのスターティングポイントを通過した女性だと強く感じました。だから僕はビョーク大好き!ビョーク万歳!!なのです。

 ここまで読んでくれた皆さんは、もう美のスターティングポイントに立っているはず。これからこのコラムで世界基準のキレイの秘密をお伝えしていきますね。