個展「失う目」を振り返る 前田エマ

マリ・クレール スタイル

 今年の3月に3年ぶりとなる個展を東京・尾山台にある「Fluss」という場所で開催しました。今日はその個展で、どんな作品を作ったのかを紹介したいと思います。

個展会場で作品を解説中 (c)Emma Maeda

 私は生まれてからずっと、川辺にあるマンションで暮らしています。リビングには広くて大きな窓があり、土手を見渡すことができます。

 夏は目が覚めるような緑の芝生の絨毯。冬に雪が降れば、すべてが覆い尽くされモノクロの世界を眺めているような気持ちになります。四季折々変わりゆくだけでなく、朝日に照らされるとガラスのようにきらめき、夕方になると桃とアプリコットを混ぜたような色の光に包まれる川面の表情の豊かさや、土手で野球をしたりマラソンをする人々を見ているのは飽きません。

雪で覆われた土手のデッサン(パステル) (c)Emma Maeda
土手で遊んだりスポーツをする人々(油彩) (c)Emma Maeda

 小学生だったある日、私は2つ下の階に住む友達の家に遊びに行きました。友達の家のリビングの窓から見える景色は、私の家から見えるものと全く同じでした。でも私は、その景色に違和感を覚えて気持ちが悪くなってしまいました。見慣れた高さと違うところから見る景色はまるで偽物の世界を見ているような体験でした。

 「私の価値観は、私の家の窓だ! 私の目は、あの窓から見える景色でできているんだ! この窓がいつかなくなってしまったら、私はこの目を失ってしまうんだな」

 あの時の感覚を、いつか表現できたらいいな、とずっと思っていました。

土手の風景を撮りためて作った映像作品 (c)Emma Maeda
前田エマ(まえだ・えま)
アーティスト

 1992年生まれ。東京造形大学卒業。オーストリアウィーン芸術アカデミーに留学経験を持ち、在学中より、モノづくりという観点から、雑誌のディレクション、ショーやイベント、ファッションブランドのモデルをつとめる。ほかにもエッセイ、写真、ペインティング、朗読、ナレーションなど、分野にとらわれない様々な活動が注目を集めている。Now Fashion Agency所属。

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