腕時計の不変の美を象徴 「パテック フィリップ」

マリ・クレール スタイル

 「腕時計」を英語に訳しなさい──答えはもちろん「watch」。ほとんどの人が即答できるはず。あるいは「wristwatch」と答える方もいるかもしれません。watchには、懐中時計=pocket watchも含まれるから。

 腕時計と懐中時計の違いは、単純明快。腕に着けるか、ポケットにしまうか。watchは、まず懐中時計として生まれ、進化し、20世紀初頭に本格的な腕時計が誕生します。1920~30年代が、懐中時計から腕時計への移行期。当時、様々なデザインが腕時計で試みられました。重要な課題は、懐中時計にはなく、腕時計に必須なストラップをいかにして調和させるか、でした。

 その正解の1つを、「パテック フィリップ」は1932年に導き出しました。この年生まれた「Ref.96」は、後に他社の多くが手本とし、目標にした傑作。何より優れていたのは、ラグの造形でした。ラグとは、ケースの上下に2本ずつあるストラップを取り付けるための突起。Ref.96は、それをケースサイドと有機的なカーブでつながるように造形し、さらにその先がストラップへとつながるよう、美しく仕立てていたのです。腕に着ける時計だからこその不変の美を、Ref.96は丸型ケースで創出したのでした。

カラトラバ Ref.4897。手巻き、ケース径33ミリ、ホワイトゴールド×ダイヤモンド、サテンバンド、314万円(パテック フィリップ/パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター)

 「カラトラバ」は、Ref.96を原点とするシンプルな丸型時計のコレクション。この「カラトラバ Ref.4897」も、ケースサイドとラグとが滑らかに融和する造形美を受け継いでいます。鮮やかなブルーの色の下に潜む、文字盤を12分割するようなギヨシェと呼ばれる装飾は、手彫り。さらに、裏に見えるムーブメントは、すべての部品に装飾や鏡面仕上げが手仕事で施され、美しさを湛えています。

 この過剰なまでの手仕事による仕上げこそが、「パテック フィリップ」の時計が世界最高峰と称賛される理由の1つ。丸型ケースの不変の美もまとい、いつまでも色褪せず、子どもに孫にと受け継げます。

 歯車などの部品を留めるプレート(ブリッジ)は、スイス伝統のコート・ド・ジュネーブと呼ばれるストライプ装飾が浮かぶ様子が美しい。ブリッジの側面はすべて45度の角度で面取りして鏡面仕上げにするなど、隅々まで手仕事が行きわたっています。

 (c)marie claire style/selection, text: Norio Takagi

髙木教雄(たかぎ・のりお)
ライター

 1962年生まれ。時計を中心に建築やインテリア、テーブルウェアといった「ライフスタイルプロダクト」を取材対象に専門誌や雑誌で幅広く執筆。スイスの新作時計発表会の取材も、99年より継続して取り組んでいる。独立時計師フランソワ・ポール・ジュルヌ著『偏屈のすすめ。』(幻冬舎)の監修・解説も担当。

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