ランウェイで着替え、船上でショー……場所と演出に新発想 東コレ

宮田理江のモード日和

 2018-19年秋冬シーズン向けの新作を発表する「アマゾン ファッション ウィーク東京(東京コレクション、3月19~24日)」は大きな盛り上がりを見せました。

 服や靴に加え、ショーを新鮮に見せていたのは、クリエーターたちが思い思いに選んだ「場所」。スケートリンクや船上など、意外な会場がそれぞれの作品に特別なムードを加えていました。モデルがステージ上で着替えたり、座ったままだったりと、ショーの演出にも斬新な工夫が見られました。

G.V.G.V.(ジーヴィージーヴィー)

 ブランド創設から20年近い「G.V.G.V.(ジーヴィージーヴィー)」は、東京ドームシティ(東京都文京区)にあるローラースケートのリンクをショー会場に選びました。

 今回のショーでは、アメリカでヒッピーカルチャーが盛り上がった1970年代のムードを濃くしていました。リンクを滑走しながら追い抜きを仕掛ける「ローラーゲーム」も当時流行していて、スケートリンクはゆかりの場所。

 ショー内容も、当時の社会に反抗する若者たちが好んだサイケデリックな色使いや、マルチカラーの総花柄を多用。ヒッピーの装いを現代的にアレンジしました。特大のフープ(輪っか)イヤリング、太ももまで届くサイハイ・ブーツもセブンティーズの空気を帯びていました。

5-knot(ファイブノット)

ブランド提供

 創り手のスタンスや手法を、ショーの会場選びに反映させたケースも。様々な国・地域を巡る旅からインスピレーションを得ている「5-knot(ファイブノット)」は、天王洲アイルの運河に浮かぶクルーズ船の上でショーを開きました。旅先での巡り合いを重んじる創作態度を感じ取ってもらう上では格好のスペースです。

 今回はポルトガルの古都オビドスが着想源。クラシックな紋章やタイルなどを連想させるモチーフにも、古都の風情がうかがえます。

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 チェック柄やビニール、ネオンカラーなど、雰囲気や質感の異なるモチーフ、素材、色などを巧みに重ね合わせ、表情の深いレイヤード(重ね着)に仕上げています。ネクタイ風のアイテムを首にじか巻きし、ロングストールを片方の肩だけにかけます。靴はのどかなスリッポン。ルールにとらわれないまとい方が、旅人の自由さを印象づけました。

AKIKOAOKI(アキコアオキ)

 ショーの構成を大きく変える動きが広がっています。まるで「着替え」というタイトルの無言劇のような演出を見せたのは、伸び盛りの「AKIKOAOKI(アキコアオキ)」。

 ステージ中央に仮設のフィッティングスペースを設け、ハンガーに掛けられた服をモデルが自ら着て、ランウェイを歩き始めます。メンズライクなシャツをベースアイテムに据えて、その上から袖を裁ち落としたようなテーラードジャケットやビスチェ風ショートトップスを重ねていく、刺激的なレイヤードを提案。着替えるたびにムードが変わり、深みが増す仕掛けです。

 大胆なカットアウト(くり抜き)やスリットが施されていて、重ね着なのに軽快で、ウィットに富んでいます。作品と見せ方が溶け合った、ドラマティックな構成でした。

YOHEI OHNO(ヨウヘイ オオノ)

 細いランウェイをモデルが往復するという、従来型のショー形式から離れる創り手が増えつつあります。「YOHEI OHNO(ヨウヘイオオノ)」の大野陽平デザイナーもその一人。今回は仕事机や革張り椅子などを配した、都会的な部屋のような空間を用意。モデルの半数以上は座っているという、日常に近い状態で新作を発表しました。

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 くつろいだ雰囲気にふさわしく、パンツとスカートの重ね着や、ツイード生地のセットアップ(上下そろい)など、気張らない装いが続きました。でも、袖にチュールを重ね、靴にファーを乗せるといった工夫を盛り込んでいます。

 

 まるでカーテンを胸からったかのようなアイデアは、アートライクなムードを呼び込んでいました。

mintdesigns(ミントデザインズ)

 スポーツとのクロスオーバーが広がったのは、今回の東コレで目立った傾向です。単純にスポーツテイストをまぶすのではなく、健やかな気分で過ごせる装いの「アスレジャー(アスリートとレジャーからの造語)」を意識しつつ、さらに上質感を盛り込む提案が相次ぎました。往年の名テニスプレーヤーが創業した英国ブランド「Fred Perry(フレッドペリー)」とコラボレートした「mintdesigns(ミントデザインズ)」は、東京・青山にある「フレッドペリー」のショップをショー会場に選びました。

 小説や映画で知られる『華麗なるギャツビー』を下敷きに、複雑なミックスレイヤードを組み上げています。軽快な着映えのブルゾンや、アクティブな気分を帯びたパーカー(フーディー)はスポーツ気分の漂うショップに自然となじんで見えました。

 

 ランウェイショーを見合わせるブランドが欧米で相次ぎ、「ショー不要論」が飛び出す中、東コレの担い手たちはクリエーションのイメージや説得力を増幅する手段として、「ふさわしい場所」を探し当てました。魅力的なロケーションに加え、ショー演出の面でもイノベーションを試していました。ありきたりな方程式から抜け出そうとするチャレンジは、東コレ参加デザイナーたちの自信とプライドを感じさせました。

宮田理江
宮田理江(みやた・りえ)
ファッションジャーナリスト

 ファッションブランドの販売員としてキャリアを積んだ後、バイヤーやプレスも経験してジャーナリストへ。海外コレクションのリポートや次シーズンのトレンド予測、着こなしのアドバイスといった原稿執筆のほか、セミナー・講演なども手掛けている。著書に「おしゃれの近道」(学研パブリッシング)など。

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