ロンドン、パリ、ミラノなど世界の主なファッションウィークには、それぞれに持ち味があります。中でもロンドンは、挑戦的で若々しいクリエーションで知られています。2018-19年秋冬向けのコレクションでも、従来の枠を踏み越えるような革新的表現が試されました。英国らしさを大事にしながら、モードの冒険が相次いだ今回のショーにはロンドンらしさがあふれていました。
MM6 Maison Margiela(エムエム6 メゾン マルジェラ)

シルバーメタリックで会場もコレクションも統一したのは、前衛的な作風で知られる「MM6 メゾン マルジェラ(MM6 Maison Margiela)」。
全面をホイルで覆ったパブで、まばゆい銀色ルックを打ち出しました。大襟コートやデニムジャケットも銀メッキを施したかのよう。

重金属系の鈍い輝きでショーをまとめ上げました。バッグやブーツまでシルバーでコーティングした装いは、フューチャリスティック(未来的)なSFムードを帯びています。ミラーボール風のきらめくタイル仕立ての服はディスコ時代を思い起こさせます。アートと科学の感覚を交ぜ合わせつつ、どこか懐かしい気分も帯びていて、テクノロジー時代への皮肉も感じられました。
RICHARD QUINN(リチャード クイン)

英国のエリザベス2世女王が姿を見せたのは、デビューからまだ間もない新星「RICHARD QUINN(リチャード クイン)」のショー。女王の来場は史上初とあって、今回のロンドンで最大のサプライズとなりました。英国政府がファッションを産業と文化の両面で重要と位置付けていることを示す出来事でもありました。

伸び盛りの新鋭は花柄を大胆にあしらって、華やかでフレッシュな装いを披露。様々な色や柄のスカーフを結び合わせてワンピースに仕立てたのもチャレンジングな仕掛け。

中綿が入ったふんわりフォルムのジャケットはヒットを予感させます。末広がりシルエットのドレスは、ドラマティックにマント風の羽織り物をひるがえし、究極のグラマラスをうたい上げていました。
TEATUM JONES(テータム ジョーンズ)
2人組デザイナーが率いる、若きロンドンブランド「TEATUM JONES(テータム ジョーンズ)」は、立場も年齢も異なる25人の女性との対話から着想を得て、女性の内面を掘り下げたコレクションを披露しました。「喜び、悲しみ、希望」という三つの感情を、それぞれにふさわしい色で表現しています。

たとえば、喜びは赤やピンクに託し、流れ落ちるようなシルエットのオールレッドのドレスを仕立てました。希望を象徴したのは、マスタードイエローのパンツスーツ。ゆるくベルトで締め、パンツはたっぷりのワイド幅で、ありきたりのパンツスーツに見せていません。

あらためて女性の地位向上が求められる中、女性のありように関する哲学的なアプローチが相次いだのは、今回のロンドンの目立った傾向でした。
HOUSE OF HOLLAND(ハウス オブ ホランド)

英国らしいウィットがふんだんに注ぎ込まれたのも、今回の見どころでした。ユーモア感覚を持ち味とする「HOUSE OF HOLLAND(ハウス オブ ホランド)」は、端正なチェック柄パンツスーツの上からロープ風ベルトを巻き、登山用具のカラビナまでぶら下げました。ダウンジャケットはカムフラージュ(迷彩)柄で彩っています。
スポーティーなセットアップ(上下そろい)にはクラッチバッグとドレスシューズを添えて、あえてちぐはぐ感を引き出しました。

ラッパーやスケーターに代表されるストリートカルチャーへの共感が、装いに若々しいエナジーをみなぎらせていました。
保守的な装いに疑問を投げかけた

ロマンティックやグラマラスが盛り上がったこれまでの流れを受け継ぎながらも、保守的な「女性の装い」に疑問を投げかけたのは、今回のロンドンの新潮流と言えるでしょう。ストリートテイストを華やかに仕上げたルックは、次のトレンドを予感させます。従来とは異なるイメージをまとった服を着ることによって、女性の立場やマインドにも変化をもたらしていこうとするクリエイターの思いも映し込まれているようでした。