大人ロマンチックのお手本 ドリス・ヴァン・ノッテンの映画に学ぶ

宮田理江のモード日和

(c) 2016 Reiner Holzemer Film - RTBF - Aminata bvba - BR - ARTE

 たおやかでロマンティックな装いの人気が復活しています。パリコレクションの常連ブランド「DRIES VAN NOTEN(ドリス ヴァン ノッテン)」は、単なる甘いイメージではなく、フェミニンで上品な「大人ロマンティック」派の好むスタイリングのお手本とも呼べる存在。ベルギー出身の世界的デザイナー、ドリス・ヴァン・ノッテン氏を追ったドキュメンタリー映画『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』(2018年1月13日公開)と、パリで発表された18年春夏コレクションを手がかりに、着こなしのポイントを追っていきましょう。

多彩な生地と柄を操る

(c) 2016 Reiner Holzemer Film – RTBF – Aminata bvba – BR – ARTE

 ドリスは多彩な生地とモチーフ(柄)を操る作風で有名です。映画には、文字通りに世界中から集められた生地の中から好みの品を選び出すという場面もあります。近頃は人種や性別、年齢などの「ダイバーシティー(多様性)」を重んじる流れが強まっていますが、ドリスの生地選びは、産地や柄パターン、質感などの面で自由度が高く、その幅広さが彼の持ち味ともなっています。さらに、異なるテイストを組み合わせる「ミックスコーディネート」の先駆け的な存在でもあります。いくつものモチーフを響き合わせる「柄on柄」や、国や民族の枠にとらわれない文化クロスオーバーは日々の着こなしでも参考になります。

透け感ときらめきのレイヤード

 映画で描かれているのは2015年春夏と16-17年秋冬メンズのコレクションの舞台裏ですが、先月発表された2018年春夏コレクションでも、そんなドリスらしい服が目を引きました。

DRIES VAN NOTEN 2018春夏コレクション=ブランド提供

 ミックスコーデが生かされるのは、やはりレイヤード(重ね着)のアレンジ。ストライプ柄のシャツの上からビジュー(飾りパーツ)付きのチュールをかぶせたレイヤードは、ほのかな透け感がミステリアスなたたずまいを生んでいます。男性的なシャツに、相反するロマンティックなムードを重ね、チュールで全体を軽やかに見せています。

DRIES VAN NOTEN 2018春夏コレクション=ブランド提供

 オーガンジー生地で仕立てたコートは、その意外な発想に驚かされます。「生地のマエストロ(巨匠)」ならではの試み。花を愛するデザイナーらしく、かすかに薄く花柄がプリントされています。内側に着たゴールドイエローのシャツとピンクのパンツにもフラワーモチーフが躍ります。きらめくはく素材がグラマラスなムードをまとわせています。透け感ときらめきをねじり合わせ、上品さが漂う、格上のレイヤードルックに導きました。

花、刺繍・ビーズで優美な華やかさ

DRIES VAN NOTEN 2018春夏コレクション=ブランド提供

 身頃に刺繍ししゅうを迎え入れたブルゾンは、アクティブでありながらも堂々としたたおやかさを印象づけています。ゴールドを袖に配し、ゴージャス感も醸し出しました。ショートパンツとロングブーツは同じ柄でそろえて、統一感を強めています。柄や色使いにどこかオリエンタルな風情が感じられ、グローバルミックスの着姿に整っています。

DRIES VAN NOTEN 2018春夏コレクション=ブランド提供

 ゴールドのストライプがあでやかなトップスに合わせたのは、無造作に垂らした花柄スカーフが印象的なブルーグレー系のスカート。上下で組み立てた「柄on柄」のコーデです。カラートーンも上下でずらして、深みを出しています。スカーフの表情が生きて、大人の気負わない着こなしに仕上がっています。

ライフスタイルを映す仕事ぶり

(c) 2016 Reiner Holzemer Film – RTBF – Aminata bvba – BR – ARTE

 この映画は、長い時間をかけた密着取材の成果だけに、ドリスのプライベートにもしっかり光を当てています。たとえば、とても几帳面でまじめな性格が様々な場面で伝わってきます。旅行に出掛ける際は分刻みで時間割を用意したり、リビングルームでの花の並べ方にこだわったり。そんな細部にまで気を配る彼の性格は、職人気質の服づくりにそのまま写し込まれています。オンとオフが一本の線でつながっているような制作態度には潔さが感じられます。

(c) 2016 Reiner Holzemer Film – RTBF – Aminata bvba – BR – ARTE

 ドリスが自らの目指すファッションのありようを表現するのに使った言葉が「タイムレス」。何十年経っても愛着を持って着てもらいたいという気持ちが込められています。目先の流行を追わず、伝統的刺繍技術を受け継ぐドリスのクリエーションは「タイムレス=飽きない、さびない」を重んじる気持ちの表れ。今回の映画は表裏のない彼の服づくりに触れる絶好の機会となっています。

 本人の思考や暮らしぶりがそのまま服に表れるというのは、デザイナーだけに当てはまるのではなく、着る側にも言えることのようです。服装は人柄や趣味をいや応なく写し取ってしまうところがあります。見方を変えれば、様々な着こなしを試すことによって、自分の気持ちに変化をもたらすことも不可能ではありません。フェミニンな装いに苦手意識を持つ人も、ドリス流の「大人ロマンティック」を試してみれば、新しい自分を引き出せるかもしれません。

(画像協力)
ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男
http://dries-movie.com/

「ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男」

2018年1月13日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野ほか全国順次公開
(c) 2016 Reiner Holzemer Film – RTBF – Aminata bvba – BR – ARTE

宮田理江
宮田理江(みやた・りえ)
ファッションジャーナリスト

 ファッションブランドの販売員としてキャリアを積んだ後、バイヤーやプレスも経験してジャーナリストへ。海外コレクションのリポートや次シーズンのトレンド予測、着こなしのアドバイスといった原稿執筆のほか、セミナー・講演なども手掛けている。著書に「おしゃれの近道」(学研パブリッシング)など。

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