「脱・常識」のウィットやアイデアに富んだ装いが2018年春夏シーズンの東京コレクションでは数多く提案されました。着る側の好みが一段と多様化してきたのを追い風に、デザイナーは意外感やインパクトを重視。それぞれの持ち味を押し出すようなアプローチも相次ぎ、全体として東コレの表現力を高めていました。
強さとエレガンスを
ミリタリーやアウトドアをとらえ直すアプローチを得意としている「HYKE(ハイク)」は、強さとエレガンスを融け合わせました。
象徴的なアイテムが超ショート丈のミリタリー風アウター。まるでボレロやケープのような着丈です。ミリタリー風の色味で統一しつつも、ひだの細かいプリーツスカートを合わせ、上下で異なるムードを帯びさせました。パンツの上から透けるスカートを重ねるスタイリングも提案。そのほかにもフード付きのパーカをワンピースに組み込むような、奇想のトランスフォーム(変形)を見せ、性別や常識にとらわれないオンリーワンの装いに仕上げています。
合同ショーも

参加ブランドが厚みを増す東コレのポジティブな変化を印象づけたのは、それぞれがパリコレクションで成功している有力ブランド「SACAI(サカイ)」と「UNDERCOVER(アンダーカバー)」の合同ショーです。先に披露したのは「サカイ」。異なるテイストを一つの着姿に無理なく同居させる「ハイブリッド」の手法を生かし、テイストミックスを効かせていました。

一方、「アンダーカバー」では顔も姿もそっくりのモデル2人が手をつないで登場。微妙にデザインの異なる装いがウィットに富む演出。ミニワンピースが若々しいムードを打ち出していました。

多彩なファスナー使い

新鋭もチャレンジングな提案で東コレを活気づかせました。多彩なファスナー(ジップ)使いを見せたのは、ユニセックスブランドの「ACUOD BY CHANU(アクオド バイ チャヌ)」。ひじや裾にファスナーを走らせ、開け閉めや着脱が自在にできるという可変性の高いウェアを提案しました。

スカートにもファスナーを何本も配し、スリットやアクセサリーの効果を引き出しています。大ぶりな鳩目をたっぷりあしらって、戦国武将の甲冑(かっちゅう)を写し込んだような凜々しさとパンク風味を兼ね備えた装いにまとめ上げました。
ストリート感の高いアイテムも登場

凝った見せ方を試すブランドも目立ちました。東京のストリートカルチャーを表現する新興ブランド「BlackEyePatch(ブラックアイパッチ)」のショーでは、来場者にあらかじめ耳栓が渡されました。ショーの始まりを告げたのは、バイクの爆音。続いて現れたモデルたちはパーカ(フーディー)やニット帽、スニーカーといったストリート感の高いアイテムに身を包んでいました。

運送用の段ボールに貼る「取扱注意」の赤い漢字ロゴをTシャツの胸にプリント。ビニール系のケミカルな質感や、濃いめのネオンカラーも都会のわい雑な気分を醸し出しています。
着物をデフォルメ

ありきたりの服を遠ざけ、サプライズを仕掛ける取り組みが相次いだのは、今回の東コレの傾向です。アバンギャルド路線の実力派ブランド「MIKIO SAKABE(ミキオサカベ)」は昔の花魁(おいらん)が履いた下駄を思わせる、超厚底の靴を発表。足首ごとボールでくるんだようなフォルムが視線を呼び込んでいました。ウェアも伝統的な着物にデフォルメ(誇張)を施し、ブラウス袖を過剰にふくらませたり、ロング丈ベスト(ジレ)の襟を特大に変形したり。

ビッグブランドの参加や新鋭デザイナーの挑戦などが今回の東コレを盛り上げました。デコラティブ(装飾的)なテイスト、茶目っ気を帯びたデザイン、スポーティーなシルエットなどは、グローバルな流れとも同調していて、来シーズンの新たなうねりとなっていきそうです。