ロンドンコレクション(後編)~時代をまたぐアプローチ

宮田理江のモード日和

 2018年春夏シーズン向けのロンドン・ファッション・ウイーク(LFW)では、フレッシュな装いがあふれました。英国らしさを大切にしながら、次世代の消費者を呼び込もうと、ミニボトムスに象徴される若々しい提案が相次いだのが、目立った変化。「アスレジャー(アスレチック+レジャー)」と呼ばれる、スポーツテイストの着こなしもアクティブな気分をまとわせていました。時代、性別にとらわれない新しい切り口のミックススタイルが新鮮でした。

春夏のトレンドカラーはピンクで

JW ANDERSON(ジェイ ダブリュー アンダーソン)=ブランド提供
JW ANDERSON(ジェイ ダブリュー アンダーソン)=ブランド提供

 

 スペインブランド「ロエベ」のデザインを手がけ、「ユニクロ」とのコラボレーションでも話題を集めた気鋭デザイナーのブランドが「JW ANDERSON(ジェイ ダブリュー アンダーソン)」です。ミニマルでスポーティーなシルエットに、英国らしいウィットを見せました。ビスチェ風のトップスには、ブラカップのようなディテールを施しています。指先まで隠すオーバーサイズ袖で遊び心を演出。ピンクは春夏のトレンドカラーに浮上する予感がします。もものあたりを部分的に肌見せしたり、ひじから先にアームカバー風のふくらみを持たせたりしたファニーな表情と、あちこちからストリングス(ひも)を垂らす演出が装いにリズムを加えていました。

マリンモチーフでユーモラスに

 イタリア・ミラノから参加したのは、大御所デザイナーが率いる「EMPORIO ARMANI(エンポリオ・アルマーニ)」。海から着想を得て、カニや波、魚などのマリンモチーフをユーモラスに映し込みました。ガーリーなミニ丈ワンピースがキュート。淡いパステルカラーは若々しいムードを際立たせています。

EMPORIO ARMANI(エンポリオ・アルマーニ)=ブランド提供
EMPORIO ARMANI(エンポリオ・アルマーニ)=ブランド提供

 今回のロンドンでは、ミレニアル世代(20~35歳前後)への訴求を意識してか、全体にテイストの若返りが感じられました。ウエストがのぞくショート丈トップスとマニッシュなダブル裾パンツが元気なムードを醸し出しています。ミリタリー調のベレー帽もかえって愛らしさを引き出していました。

ミニ丈復活を提案

 

VERSUS VERSACE(ヴェルサス ヴェルサーチ)=ブランド提供

 こちらもミラノブランドの「VERSUS VERSACE(ヴェルサス ヴェルサーチ)」は英国流の正統派トラッドを軽やかにリモデルしました。全身をチェック柄で統一したパンツルックは、アウターの袖をなくしてロングジレ(ベスト)に。ビニール風の艶めきも帯びています。ハイテク素材をミックスするアレンジは、来年のトレンドとして注目を集めそう。

VERSUS VERSACE(ヴェルサス ヴェルサーチ)=ブランド提供

 ミニ丈ワンピースを繰り返し登場させて、「ミニ復活」を提案しました。メッシュ仕立てのワンピースは涼やかな印象。ビーチサンダルのようなフラットシューズで海辺のくつろぎを呼び込んでいました。

レトロとアクティブを融合

 穏やかな日常を再評価する傾向も今回のロンドンでは目につきました。「ANYA HINDMARCH(アニヤ ハインドマーチ)」は1970年代の英国郊外に暮らす主婦のイメージをベースに、懐かしげな装いをモダンに変えました。

ANYA HINDMARCH(アニヤ ハインドマーチ)=ブランド提供
ANYA HINDMARCH(アニヤ ハインドマーチ)=ブランド提供

 襟の大きいルームウェアはレトロな雰囲気を漂わせています。髪をくるむように巻いたヘッドバンドもどこかノスタルジック。肩出しのベアショルダーや、スリッパ風のオープントゥ・サンダルで今の気分を映し出すスポーティー風味も薫らせて、レトロとアクティブをけ合わせました。猫をプリントしたバッグなど、気持ちをなごませる小物使いは装いを朗らかに見せてくれます。

ハイテク素材に注目

TOGA(トーガ)=ブランド提供

 日本から参加している「TOGA(トーガ)」は英国の伝統的な紳士服テーラーリングを大胆に再構成してみせました。マニッシュなジャケットを、フェミニンなプリーツスカートと引き合わせ、性別にとらわれない「ジェンダーミックス」を表現。職人技の仕立てをリスペクトしつつ、前後で見え具合をがらりと変えるようなアシンメトリー(非対称)の仕掛けも披露しました。

 

TOGA(トーガ)=ブランド提供

 透明なハイテク系素材を重ねて、フューチャリスティック(未来感覚)な光沢感をオン。英国の生地文化とのずれ感を生かして、深みをもたらしています。ケミカル素材の活用は今回のロンドンで新しい流れになっていました。

 参加ブランドの規模ではパリに劣るものの、LFWは近年、モードの方向性を示す重要な存在として注目度が一段と高まってきました。英国以外からの参加も相次ぎ、ますます多様な提案が集まって、発信力を高めています。今回は伝統と革新が交差するような装いが打ち出され、前編で取り上げた「文化ミックス」に加えて、時代をまたぐようなアプローチもLFWの奥行きを深くしていました。

宮田理江
宮田理江(みやた・りえ)
ファッションジャーナリスト

 ファッションブランドの販売員としてキャリアを積んだ後、バイヤーやプレスも経験してジャーナリストへ。海外コレクションのリポートや次シーズンのトレンド予測、着こなしのアドバイスといった原稿執筆のほか、セミナー・講演なども手掛けている。著書に「おしゃれの近道」(学研パブリッシング)など。

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