『アメリ』のオドレイ・トトゥ、41歳のターニングポイント

マリ・クレール スタイル

 パリの下町モンマルトルを舞台にした映画『アメリ』で、一躍国際的な脚光を浴びるようになったオドレイ・トトゥは、16年経った現在もアメリのイメージでみられることに、いささか困惑している。『アメリ』はフランス国内でも、空前のヒット作だった。映画の中では空想好きでナイーヴな若い娘を演じたが、素顔の彼女はむしろ社交的なので、過去の作品に縛られたくないのだろう。一時はハリウッド女優として、話題作『ダ・ヴィンチ・コード』にも出演したが、その話はあまり出ないようだ。

 「私は気ままな人生を送っているの。情熱的な生き方をしたいから。たとえばココ・シャネルのように。ココと似ているな、と思うのは、恋をすると仕事をしたくなくなるところかな」

 映画『ココ・アヴァン・シャネル』で、情熱の赴くまま、愛に生きるシャネルを演じたオドレイは、自分とイメージを重ね合わせたのだろう。

運命に身を任せて、自然のままに生きたい

 9月30日から全国で封切られた彼女の新作『エタニティ 永遠の花たちへ』は、村上春樹原作の映画『ノルウェイの森』を手がけたトラン・アン・ユン監督の作品。19世紀末のブルジョア家庭を舞台に、オドレイは、美しく、大家族の中心的存在になり、家族に愛情を注ぐ主人公ヴァランティーヌを熱演している。

 花が咲き乱れる庭園に囲まれた瀟洒しょうしゃな館で、上流社会の女性たちの結婚、出産、死といった人生のドラマが、光と影のようにゆるやかに絡み合っていく様を、一世紀にわたって3人の女性を通して描いた作品だ。静かなピアノの旋律のように、メランコリックでスローな映像の中、全編を通して、研ぎ澄まされた美意識が貫かれている。とりわけコスチュームが素晴らしく、オドレイだけでなく、共演しているメラニー・ロラン、ベレニス・ベジョの優雅なドレスにも見とれてしまう。

 一度は婚約を破棄した相手と結婚し、歳月の流れと共に、夫と深い愛情で結ばれていく妻の役を、オドレイは相当気に入っていたようだ。

 「もちろん私も子供が欲しいし、家庭をもちたいと思っているのよ。だからといって、そのせいで、間違った方向にいきたくない。子供がいないからこそ、別の生き方ができるともいえる」

 家庭という閉ざされた空間の中で、家族のために身を捧げる主人公、ヴァランティーヌの生き方を肯定しながらも、自分は運命に身を任せて、自然のままに生きたいという。

 「私、ポール・エリュアールのこの言葉が好きなの。『偶然は存在しない。あるのは予め決められた約束だけだ』」

写真家として初の展覧会に挑戦

 父は歯科医で、母は教師から市議選に出馬したという知的家庭で育った彼女は、読書家の一面もあるようで、文学ではオスカー・ワイルドやトリスタン・ツァラも好きだと語っている。

 最近一段とその美貌が磨かれてきた彼女のもとには、コマーシャルのモデルとしての依頼も多く、シャネル、モンブラン、ロレアルといった国際的知名度のメゾンの顔としても、活躍している。

 「レッド・カーペットなんか、大嫌い」と若い頃から頑なに華やかな映画祭やイベントを避けてきた彼女も、新しい恋人、映画会社ゴーモンのマーケティング・ディレクターの男性とふたりで、最近はそうした場所にも顔をみせるようになった。

 「ママンになるのはいつ、ときかれるの。それは分からないわ。自然にやってくるものだから」

 新恋人とのおめでたはいつか、ときかれても、さらりと受け流しているが、いよいよ結婚も近いのだろうか。

 インタビューが苦手で、私生活については多くを語らなかった彼女も、41歳という人生のターニング・ポイントに差かかったせいか、または新恋人と熱愛中のせいか、インタビューの対応も柔らかだ。

 今夏、南仏アルルで開催されている国際写真フェスティバルのプログラムをみて、驚いた人もいたと思う。そこにはカメラマン、オドレイ・トトゥの初写真展、と告知されていたからだ。どうやら彼女はまた新たな挑戦に足を踏み出したらしい。

 華奢きゃしゃな肢体で、どこか深奥をみつめているような視線が印象的な女優オドレイ・トトゥは、今後どこへ向かっていくのか、気になるところだ。

オドレイ・トトゥ(Audrey Tautou)
女優

 1976年フランス・ボーモン生まれ。19歳の時にフランスのテレビ映画『Coeur de cible』で女優デビュー。99年、トニー・マーシャル監督の『エステサロン/ヴィーナス・ビューティ』に出演、注目される。この演技が高く評価され、翌年のセザール賞有望若手女優賞を受賞。2001年、ジャン・ピエール・ジュネ監督の『アメリ』でアメリ役を演じ、ブレイク。06年、ロン・ハワード監督の『ダ・ヴィンチ・コード』や、09年、アンヌ・フォンテーヌ監督の『ココ・アヴァン・シャネル』でヒロインを好演した。彼女のエレガントなスタイルが注目され、ラグジュアリーブランドの広告モデルや雑誌、ファッションイベントなどにも登場。

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