「しなやかに楽しむ」イネス・ド・ラ・フレサンジュさん

 元トップモデルでファッションデザイナーのイネス・ド・ラ・フレサンジュさんが来日しました。センスが光る着こなしや飾らない人柄が人気のイネスさんに、おしゃれのこと、年を重ねることについて聞きました。

 ――――イネスさんの着こなしはいつも注目の的です。心がけていることは?

 自分のスタイルを語るほどの立場ではありません。あえていうなら、できるだけシンプルな服装を心がけています。今日のストライプのパンツは、日本のブランド「45R」のもの、ジャケットは「ユニクロ」、シャツは私のブランドから。そして、アクセサリーでポイントをつくるようにしています。今日のバッグとサンダルは「ロジェ ヴィヴィエ」。カジュアルなスタイルやスポーティーな服も、洗練された雰囲気に変えられるので。

 ―――― フランスの高級靴ブランドの「ロジェ ヴィヴィエ」のアンバサダーとしても活動されています。今回はそのイベントのための来日ですね。

 様々な靴を見て思うのは、エレガントだけどつまらない、斬新だけど使えないものがあるということ。ロジェの靴は、うまくバランスがとれています。いろんな服にマッチするので、服に合う靴が必ず見つかります。

 ――――日本限定の靴が10月5日に発売されます。イブ・サンローランが1965年に発表した「モンドリアンルック」をほうふつとさせる大胆なデザインですが、イネスさんはどんな服と組み合わせますか。

「ベル ヴィヴィエ」の日本限定品。大胆な色遣いが特徴(ロジェ ヴィヴィエ提供)

 シンプルな服に合わせるのが、かっこいいでしょうね。丈を少し短くした白のジーンズと大きめで長めのセーターかな。

 ――――「肩書は好きじゃない」と日頃からおっしゃっています。

 モードの世界で働いていると、あまり肩書は関係ないように思います。ある日は写真を撮り、またある日は別の仕事をする。いろんな役割はありますが、ヒエラルキーは関係ありません。私の哲学は大それたものではありませんが、人との協調が重要だと思っています。自分自身のブランドを作っていくうえでも、何をするにも、です。

イネスさんのバッグの中。革小物が大好きだとか(宮智泉撮影)

 ――――生きる上で大切にしていることは?

 しなやかさです。仕事をしながら、時には外に出て、人の観察をする。セレンディピティー(すてきな偶然に出合ったり、予想外のものを発見すること)が大事です。

 ―――― 女性は若いことに価値があると言われることがあります。年を重ねることを、どうとらえていますか。

 若さがもてはやされるのは、日本ばかりではありません。年をとれば不便なことがたくさん起こります。髪は白くなったり、細くなったりするし。でも、いいこともあるんです。たくさん経験を積んでいるからこそ、若いころだったらパニックになっていたかもしれないような出来事も、「大したことはない」とこなしていける。経験がものを言うんです。日々の小さな幸せを探すのも上手になります。
 ただし、いつも頭の中は30歳くらいの感覚でいるようにしています。他人のことや新しいものを批判してばかりいると、老いが加速しますからね。

イネスさんが東京で興味を持った場所の写真を撮影してくれました(江戸東京博物館の人力車=左=、新宿歌舞伎町のネオン)

(聞き手:宮智泉、写真:奥西義和)

イネス・ド・ラ・フレサンジュ

 1957年生まれ。75年からモデルをはじめ、シャネルをはじめ、有名ブランドのモデルを務めた。2005年からロジェ ヴィヴィエのアンバサダー。自身のブランドのほか、ユニクロとの協業ブランドも展開。