行きつ戻りつ、ヨーヨーのような人生 ミュージシャン“ソーコ”

マリ・クレール スタイル

 異民族のメルティング・ポットといわれるパリで、また一人、新たな個性派スターが生まれた。ミュージシャン、女優として脚光を浴びている“ソーコ”の本名は、ステファニー・アレクサンドラ・ミナ・ソコリンスキー。彼女の父方の祖父母はロシア人とポーランド人で、母方はイタリア人とフランス人だという。まるでヨーロッパを象徴するようなスターだ。

インスタのフォロワー約18万人、ネオ・パンクの女王

 19世紀末、パリがアートの華やぎに包まれていたベル・エポックの時代に、ダンスに新境地を開いたアメリカ人ダンサー、ロイ・フラーの情熱的な人生を描いた映画『ザ・ダンサー』で主役を演じている。ソーコは2007年にヒットしたシングル曲「I’ ll Kill Her」でデビューした、パリのシンガー・ソング・ライターだ。『ザ・ダンサー』には、ヴァネッサ・パラディとジョニー・デップの娘、リリーローズ・デップも出演して話題になっていたが、6月のBunkamuraル・シネマでの封切り前に来日したのはソーコだった。

 パリではネオ・パンクの女王として、熱狂的な若い女性ファンがいる彼女は、インスタグラムのフォロワーが約18万人で、目下パリのファッション・リーダーとしても注目されている。

 くっきりとした目鼻立ちで、強烈な印象を与えるその美貌は、男性も女性も夢中にさせる。昨年はハリウッド女優のクリステン・スチュワートをすっかり虜にして、ふたりは熱愛カップルとして、パパラッチの恰好の餌食になっていたが、1年も経たずに破局を迎えてしまった。どうやら彼女も『ザ・ダンサー』で演じるロイ・フラー同様に、その私生活はドラマティックのようだ。

「シンプルな道が、何よりも嫌い」

 インタビューの場所は、渋谷のBunkamuraだった。当日は日本で買ったという、80年代のカラフルなヴィンテージ・ファッションを着て、今からリングに上がるボクサーのように、最初から激しい視線をこちらに向けてきた。反逆的で、暗い情熱を秘めたその眼差しには、みるからに鋭い感性が宿っているようだ。初対面のあいさつもそこそこに、周囲のスタッフに、インタビュー中は絶対に音楽も私語もやめてほしい、と言い渡している。「どんな小さな音も、集中力の妨げなの」と言う。

 今年32歳。『ザ・ダンサー』で初めて主役を演じたとはいえ、すでに大女優の貫禄充分な光景だった。

 ──ロダンやジャン・コクトーが熱狂し、絶賛していた天才舞踏家ロイ・フラーを演じるために、ダンスの場面などで並々ならぬ努力をしたと思われるが、実際にはどうだったの?

 「私が5歳の時に、目の前で父が倒れて息を引き取ったの。その光景がトラウマになって生涯苦しむのではないかと心配した母は、私に色んな習い事をさせたの。何かに熱中したら、忌まわしい記憶も薄れるのではないか、と考えたのね。それでピアノ、乗馬をするようになって、ダンスも少しだけやっていたの。映画の中では代役でもいい、と言われたけど、絶対自分で踊りたかったから、毎日7時間ダンスの特訓を受けていた」

 深く響く声で、いきなり子供の頃の記憶から話し始めたソーコは、胸に下げた木の十字架を指先で弄んでいる。

 ──印象的な場面は?

 「オペラ座での撮影の日。あのオペラ座の舞台に自分が立っていると考えただけで、なんだかムチャクチャ興奮してしまったの」

 地方都市ボルドーの近郊で生まれ、16歳の時に実家を離れてパリで暮らすようになったソーコにとって、やはりパリのオペラ座は特別に神聖な場所だったようだ。

 「自分でも私の人生って、ヨーヨーみたいだと思うことがあるのよ。行きつ戻りつを繰り返しているだけ。なにもかもみんな欲しいという欲望と、それをすっかり手放したいという欲望で、交互に揺れるの。だけどすっかりそれを見失ってしまうのも不安だし、そう考えているだけでも、くたくたになる」

 今回の来日にしても、パリから東京までストレートにはこず、最初に沖縄・宮古島から久高(くだか)島へいき、奈良、京都をめぐって東京にきた。文字通り「シンプルな道が、何よりも嫌い」というソーコは、愛読書のバイロン卿の詩集を持って、吟遊詩人のように旅から旅をしていたいのだろうか。

 女優の時は音楽を忘れ、映画が一段落したらまたニューアルバムに取り掛かると言う。

映画情報 ◆『ザ・ダンサー』Bunkamuraル・シネマほか、公開中

ソーコ(ステファニー・アレクサンドラ・ミナ・ソコリンスキー)
ミュージシャン、女優

 1985年フランス・ボルドー生まれ。2001年パリに移る。07年、自主制作したミニアルバム『Not Sokute』の1曲「I’ll Kill Her」がデンマークでヒット。ステラ・マッカートニーのショーにも使用され、注目される。14年、全米ビルボードのシングル・チャートでいきなり9位にランクイン。一気にスターダムに。また、映画にも早くから出演を続け、09年、グザヴィエ・ジャノリ監督『A l’origine』で存在感を放ち、セザール賞の有望若手女優賞にノミネートされる。12年、アリス・ウィノクール監督の『博士と私の危険な関係』でヒロインのオーギュスティーヌを演じ、ロミー・シュナイダー賞にノミネート。17年、ステファニー・ディ・ジュースト監督の『ザ・ダンサー』でセザール賞の主演女優賞にノミネート、さらに、国際女性デーのためにマドンナが制作したショートフィルム『Her Story』でマドンナとの念願のコラボを果たす。(17年4月現在)。

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