「らしさ」を挑発「モード・ショウ」を見逃すな!

2017年の「モノ・セックス・モード・ショウ」より

生誕100年記念の長沢節展

 細くて、軽くて、弱いからこそ、優しく美しい――。独特の美意識で日本のファッション・イラストレーション界を牽引けんいんした長沢節(1917~1999)=写真下=。主宰した美術学校「セツ・モードセミナー」は、山本耀司ようじ、花井幸子、安野モヨコ、金子国義、樹木希林ら、著名なファッション・デザイナーや漫画家、イラストレーター、タレントらを多数輩出しています。

 彼の生誕100年を記念した「長沢節展 デッサンの名手、セツ・モードセミナーのカリスマ校長」が、東京都文京区の弥生美術館で6月25日まで開催されています。デッサン画や風景画、校舎の一角にあったプライベート・ルームの秘蔵写真などが多数展示される中、注目したいのは、「モノ・セックス・モード・コレクション」のコーナー。なぜなら、彼の思想が最もよく表されているからです。

時代を驚かせた「モノ・セックス・モード・ショウ」

 男性にミニスカートをはかせて「弱い」男性美をアピールし、半裸に近い男女のモデルが肩を並べて闊歩かっぽする「モノ・セックス・モード・ショウ」を初めて開いたのは、1967年。東京・銀座のワシントン靴店本店のオープニング・イベントとして企画されたもので、この挑発的な試みは世間をあっと驚かせました。

1970年のモノ・セックス・モード・ショウ

 「モノ・セックス」について、その著作でこう語っています。

 ≪男性社会の長い歴史の中で、いつの間にか私たちが無条件に信じていた「男らしさ」「女らしさ」を疑いこれをどこまで拒否するか?(中略)今度の実験では、従来のしきたりを破って、特に「男もの」とか「女もの」を一切やめてしまいました。つまり自分のボディに合いさえすれば誰が何を着ても、履いてもいい無性(モノ・セックス)なのです≫

2017年に再現された「モノ・セックス・モード・ショウ」

 彼は、戦前の画学生の時代から一貫してガリガリに痩せたモデルを好み、ゴツゴツと骨ばった人物を描き続けました。こうした「骨」への偏愛は、男女差別のような、社会に存在する固定観念や偏見を見透かして、物事の根幹を見ようとする独特の「セツ美学」を形づくっていくのです。軍事教練に不合格になって文化学院に進み、そこで出会った気鋭の哲学者、三木清の影響が大きいともいわれています。

女性も骨ばった人が好き(1990年代)=左=、理想のモデル、ポールのデッサン(1989年)

当時のショウの再現ムービー上映

 初のショウから50年後の今年、「セツ・モードセミナー」の卒業生らによって、当時の靴とコスチュームをそのまま活かした「モード・ショウ」が再現されました。いま見ても斬新で、男とは? 女とは? そもそも人間の美とは何なのだろう? などと、いろいろ考えさせられます。

 このほどショウの内容がムービーに編集され、弥生美術館2階の展示室で上映されることになりました。6月18日と25日のどちらも午後5時15分から約30分の予定です。事前申し込み制なので、詳細は同美術館のホームページで確認してください。(読売新聞編集委員・永峰好美)